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占いの分類入門 - 命術・卜術・相術を体系的に理解する

3行まとめ

  • 占いは命術(生年月日系)・卜術(偶然系)・相術(形態系)**の3つに大別できる
  • 命術は「生まれた時」、卜術は「今この瞬間」、相術は「今ある形」を見る
  • 各分類の特徴を理解すれば、目的に応じて適切な占いを選べる

目次

  1. 三術分類とは何か?
  2. 命術(めいじゅつ)- 生まれた時の情報で運命を読む
  3. 卜術(ぼくじゅつ)- 偶然の中に必然を見る
  4. 相術(そうじゅつ)- 目に見える形から読み取る
  5. 三術の比較 - どれを選ぶべきか?
  6. データサイエンス的考察
  7. 実践的活用法
  8. よくある質問Q&A
  9. まとめ

1. 三術分類とは何か?

1.1 定義と歴史

三術(さんじゅつ) = 命術 + 卜術 + 相術

中国の古代哲学に基づく占いの分類体系です。それぞれ異なる情報源とロジックを用います。

歴史的背景

  • 紀元前2000年頃:中国で陰陽五行説が確立。歴史はかなり長いんですね。古代ギリシャ文明の頃ですね。
  • 漢代(紀元前206年~220年):三術の体系が整理される
  • 日本への伝来:飛鳥・奈良時代に仏教とともに伝わる
  • 現代:西洋占星術、タロットなども三術で分類可能

1.2 三術の基本構造

分類読み方入力データ目的
命術めいじゅつ生年月日・出生時刻・場所宿命・性格・人生傾向占星術、四柱推命、数秘術
卜術ぼくじゅつその場の偶然・シンクロニシティタイミング・意思決定タロット、易、おみくじ
相術そうじゅつ形態・環境・名前現状分析・改善提案手相、人相、風水、姓名判断

ポイント

  • 命術 = 定数入力(変わらない生年月日)
  • 卜術 = 変数入力(その時々の偶然)
  • 相術 = 測定入力(観察可能な形態)

2. 命術(めいじゅつ)- 生まれた時の情報で運命を読む

2.1 命術の定義

命術は、生年月日・出生時刻・出生地といった変更不可能な情報から、その人の基本的性質や人生の傾向を読み取る方法です。

命術の3つの前提

  1. 決定論:生まれた瞬間に基本的な性質が決まる
  2. 天体の影響:宇宙の配置が人間に影響を与える(占星術の場合)
  3. 循環理論:時間は周期的に巡る(東洋思想)

2.2 代表的な命術

2.2.1 西洋占星術(ホロスコープ)

  • 入力データ:生年月日、出生時刻、出生地
  • 計算方法:天文暦による天体位置計算
  • 出力:12星座、10惑星、12ハウス、アスペクト
  • ロジックの強度:★★★★★(天文学的計算に基づく)
  • 科学性:計算は科学的、解釈は主観的

データ構造の例

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{
  "birth_date": "1990-01-15T14:30:00",
  "birth_place": {"lat": 35.6762, "lon": 139.6503},
  "sun_sign": "山羊座",
  "moon_sign": "蟹座",
  "ascendant": "双子座",
  "planets": {
    "mercury": {"sign": "山羊座", "house": 8},
    "venus": {"sign": "水瓶座", "house": 9}
  }
}

2.2.2 四柱推命(しちゅうすいめい)

  • 入力データ:生年月日時(年柱・月柱・日柱・時柱の4つ)
  • 計算方法:干支・陰陽五行による組み合わせ
  • 出力:通変星、十二運、大運(人生のサイクル)
  • ロジックの強度:★★★★☆(複雑な組み合わせ論理)
  • 科学性:統計的な裏付けは限定的

論理構造

  • 10干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)× 12支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)= 60通り
  • 4柱 → 60^4 = 12,960,000通りの組み合わせ(実際は制約あり)
  • 陰陽五行(木火土金水)の相生・相剋関係で解釈

2.2.3 数秘術(ヌメロロジー)

  • 入力データ:生年月日、名前
  • 計算方法:数字の合計を1桁に還元(1~9、または11・22・33)
  • 出力:ライフパスナンバー、デスティニーナンバーなど
  • ロジックの強度:★★★☆☆(単純な加算)
  • 科学性:数学的には単純、意味づけは主観的

計算例

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生年月日:1990年1月15日
→ 1+9+9+0+1+1+5 = 26 → 2+6 = 8
ライフパスナンバー:8

2.2.4 九星気学

  • 入力データ:生年月日
  • 計算方法:生まれ年の九星と月の九星の組み合わせ
  • 出力:一白水星~九紫火星の9タイプ + 方位吉凶
  • ロジックの強度:★★★☆☆(周期的パターン)
  • 科学性:統計的検証は不十分

2.3 命術の特徴

メリット

  • 再現性が高い:同じ入力なら同じ結果
  • 長期的傾向の把握:人生全体の流れを見る
  • 性格分析に適する:基本的性質の理解

デメリット

  • 変化に対応しにくい:日々の細かい判断には不向き
  • 決定論的:「運命は変えられない」という印象
  • 出生時刻の精度問題:正確な時刻が分からない場合が多い

適した相談内容

  • 自分の性格や才能を知りたい
  • 人生の大きな流れを把握したい
  • 適職やキャリアの方向性を考えたい
  • 相性を長期的視点で見たい

参考

誕生月がどこまで人生を左右するか【データストーリーテリング】

誕生月がどこまで人生を左右するか【データストーリーテリング】


3. 卜術(ぼくじゅつ)- 偶然の中に必然を見る

3.1 卜術の定義

卜術は、その瞬間の偶然性(シンクロニシティ)を利用して、現在の状況や近未来を読み取る方法です。タロット、易、おみくじなど。

卜術の3つの前提

  1. シンクロニシティ:意味のある偶然の一致が存在する
  2. ランダム性の意味:偶然の中に深層意識が反映される
  3. タイミングの重要性:「今この瞬間」の情報が重要

3.2 代表的な卜術

3.2.1 タロット

  • 入力データ:カードをシャッフルして引く
  • 計算方法:カードの組み合わせとスプレッド(配置法)
  • 出力:大アルカナ22枚+小アルカナ56枚=78枚の象徴
  • ロジックの強度:★★☆☆☆(象徴体系は一貫性あり)
  • 科学性:確率論的には1/78、意味は主観的

確率論

  • 1枚引き:78通り
  • 3枚引き(過去・現在・未来):78 × 77 × 76 = 456,456通り
  • ケルト十字(10枚):天文学的数字

解釈の構造

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カード:The Fool(愚者)
位置:過去の位置
正位置/逆位置:正位置
解釈:新しい始まり、純粋さ、リスクテイク
文脈:恋愛相談 → 「過去に自由な恋愛観を持っていた」

3.2.2 易(えき)

  • 入力データ:コインを6回投げる、または筮竹を使う
  • 計算方法:陰(–)陽(—)の組み合わせ → 64卦
  • 出力:64卦×6爻 = 384通りの状況
  • ロジックの強度:★★★★☆(『易経』という古典哲学)
  • 科学性:確率は1/64、解釈は深い哲学的背景

論理構造

  • 8卦(乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤)× 8卦 = 64卦
  • 各卦に「卦辞」、各爻に「爻辞」という解説文
  • 例:乾為天(けんいてん) = 最も陽のエネルギーが強い状態

3.2.3 おみくじ

  • 入力データ:くじを引く
  • 計算方法:ランダム抽選
  • 出力:大吉・吉・中吉・小吉・末吉・凶・大凶(神社により異なる)
  • ロジックの強度:★☆☆☆☆(単純なランダム)
  • 科学性:純粋な確率

統計データ

  • 一般的な配分:大吉17%、吉35%、中吉18%、小吉12%、末吉6%、凶12%
  • 浅草寺:凶30%(他より多い)

3.2.4 ルーン占い

  • 入力データ:ルーン文字の石を引く
  • 計算方法:24文字+ブランク=25通り
  • 出力:各ルーンの象徴的意味
  • ロジックの強度:★★☆☆☆(北欧神話の象徴体系)
  • 科学性:タロットと同様

3.3 卜術の特徴

メリット

  • 柔軟性が高い:どんな質問にも対応可能
  • タイミング重視:「今この瞬間」の判断に適する
  • 心理的効果:無意識の投影(プロジェクション)を可視化

デメリット

  • 再現性がない:同じ人が同じ質問をしても結果が変わる
  • 解釈の幅が広い:占い師の技量に大きく依存
  • 依存性:何度も占いたくなる

適した相談内容

  • 今すぐ決断を迫られている
  • AとBどちらを選ぶべきか
  • 現在の状況をどう解釈すべきか
  • 相手の気持ちを知りたい(心理投影として)

4. 相術(そうじゅつ)- 目に見える形から読み取る

4.1 相術の定義

相術は、物理的に観察・測定できる形態から、その人の性質や運勢を読み取る方法です。手相、人相など。

相術の3つの前提

  1. 形態と本質の対応:外見は内面を反映する
  2. 環境の影響:周囲の環境が人に影響を与える
  3. 可変性:形は変化するため、運勢も変えられる

4.2 代表的な相術

4.2.1 手相

  • 入力データ:手のひらの線、丘、指の形
  • 計算方法:主要線(生命線、知能線、感情線)の形状・長さ
  • 出力:性格、健康状態、運勢の傾向
  • ロジックの強度:★★☆☆☆(パターン認識)
  • 科学性:一部は医学的裏付けあり(健康状態との関連)

観察項目

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生命線:親指の付け根から手首へ → 体力・健康
知能線:人差し指の下から横へ → 思考パターン
感情線:小指の下から横へ → 感情表現
運命線:手首から中指へ → キャリア
結婚線:小指の下の横線 → 恋愛・結婚

4.2.2 人相(顔相)

  • 入力データ:顔の各パーツの形、配置、バランス
  • 計算方法:12宮(額・眉・目など)の状態を評価
  • 出力:性格、運勢、健康状態
  • ロジックの強度:★★☆☆☆(経験則的パターン)
  • 科学性:一部は心理学的裏付けあり(表情と性格の関連)

現代科学との接点

  • 表情筋の使い方 → 性格との相関(よく笑う人は笑い皺ができる)
  • 顔の非対称性 → ストレスや健康状態を反映
  • AI顔認識 → パターン認識としては成立

4.2.3 風水

  • 入力データ:建物の方位、間取り、家具の配置
  • 計算方法:八卦、五行、玄空飛星など複数の理論
  • 出力:各部屋・方位の吉凶、改善提案
  • ロジックの強度:★★★★☆(複雑な理論体系)
  • 科学性:環境心理学と一部重なる(日当たり、動線など)

論理構造

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北:水のエネルギー → 仕事運(玄武)
南:火のエネルギー → 名誉運(朱雀)
東:木のエネルギー → 健康運(青龍)
西:金のエネルギー → 金運(白虎)
中央:土のエネルギー → バランス

科学的に合理的な部分

  • 南向き = 日当たり良好 → 健康に良い
  • 寝室の位置 = 静かな場所 → 睡眠の質向上
  • 動線の最適化 = ストレス軽減

4.2.4 姓名判断

  • 入力データ:名前の文字、画数
  • 計算方法:天格・人格・地格・外格・総格の画数
  • 出力:性格、運勢、適性
  • ロジックの強度:★★☆☆☆(数の組み合わせ)
  • 科学性:心理的影響はあり得る(名前の印象)

計算例

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名前:田中太郎
天格(姓):田(5)+ 中(4)= 9
人格(姓の最後+名の最初):中(4)+ 太(4)= 8
地格(名):太(4)+ 郎(9)= 13
外格:総格 - 人格 + 1
総格:全画数の合計 = 22

4.3 相術の特徴

メリット

  • 視覚的で分かりやすい:目で見て確認できる
  • 変化を追跡できる:定期的に観察して変化を見る
  • 実践的改善提案:具体的なアクションが取れる(風水など)

デメリット

  • 主観的判断:観察者の経験に大きく依存
  • 変化の影響:加齢、整形、リフォームで変わる
  • 統計的裏付け不足:科学的検証が難しい

適した相談内容

  • 自分の現状を客観的に見たい
  • 具体的な改善方法を知りたい
  • 環境を整えて運気を上げたい
  • 将来的な健康リスクを知りたい

5. 三術の比較 - どれを選ぶべきか?

5.1 情報理論で見る三術

項目命術卜術相術
入力タイプ定数(固定)変数(ランダム)測定値(可変)
データ構造構造化データ確率的データ観測データ
時間軸長期(人生全体)短期(今この瞬間)中期(現在~近未来)
再現性高い低い中程度
解釈の幅中程度広い狭い
科学性計算は科学的確率論的一部は科学的

5.2 使い分けガイド

シーン別おすすめ

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人生の方向性を考えたい
  → 命術(占星術、四柱推命)

今すぐ決断したい
  → 卜術(タロット、易)

現状を改善したい
  → 相術(風水、手相)

性格を深く知りたい
  → 命術 + 相術

相手の気持ちを知りたい
  → 卜術(ただし投影である可能性を理解)

転職・引っ越しのタイミング
  → 命術(大運・トランジット)+ 卜術(意思決定)

5.3 組み合わせて使う

実際の占い師は三術を組み合わせることが多い:

例:恋愛相談の場合

  1. 命術(占星術)で基本的相性を見る
  2. 卜術(タロット)で相手の現在の気持ちを読む
  3. 相術(人相)で性格的特徴を確認

例:転職相談の場合

  1. 命術(四柱推命)で適職・時期を見る
  2. 卜術(易)で具体的な企業選択の判断
  3. 相術(風水)でオフィス環境のチェック

6. データサイエンス的考察

6.1 それぞれの「当たる」メカニズム

命術が「当たる」理由

  1. バーナム効果:誰にでも当てはまる記述を自分だけに当てはまると感じる
  2. 確証バイアス:当たった部分だけ記憶に残る
  3. 自己成就予言:信じることで実際にその通りに行動する
  4. 統計的相関(可能性):生まれた季節と性格に何らかの関連があるかもしれない

卜術が「当たる」理由

  1. 投影効果:自分の無意識をカードに投影して読み取る
  2. 選択的注意:自分が気にしているテーマに関連する象徴を選んで解釈
  3. コールド・リーディング:占い師が相談者の反応を見ながら調整
  4. 偶然の一致:確率的に時々当たる

相術が「当たる」理由

  1. 実際の相関:表情と性格、環境と心理状態には実際に関連がある
  2. 観察力:経験豊富な観察者は微細な情報から多くを読み取れる
  3. 平均への回帰:多くの人に共通するパターンを指摘する
  4. ラベリング効果:「あなたはこういう人」と言われると実際にそうなる

6.2 情報量の比較

エントロピー(情報量)の観点

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# 概算の組み合わせ数

# 命術
占星術 = 12星座 × 10惑星 × 12ハウス = 1,440パターン
        + アスペクト = 実質的には数十万パターン
四柱推命 = 60^4  1,300万パターン

# 卜術
タロット3枚 = 78 × 77 × 76  45万パターン
 = 64 × 6 = 384パターン

# 相術
手相 = 連続値のため実質無限パターン
風水 = 方位8 × 五行5 × 配置パターン = 数千パターン

情報量が多い = 精度が高い?

  • 必ずしもそうではない
  • 情報量が多い = 解釈の自由度が高い = 「当たったように感じやすい」
  • 単純なシステムの方が再現性は高い

7. 実践的活用法

7.1 占いをツールとして使う

科学的根拠は限定的だが、以下の用途では有効:

1. 自己理解のフレームワーク

  • 命術で自分の基本的傾向を把握
  • 「本当に当たっているか」より「気づきがあるか」

2. 意思決定の補助

  • 卜術で選択肢を整理
  • 直感を言語化するツール

3. 環境改善のきっかけ

  • 相術で具体的なアクションを決める
  • 掃除や模様替えのモチベーション

4. コミュニケーションツール

  • 「何座?」「血液型は?」という共通言語
  • 人間関係の潤滑油

8. よくある質問Q&A

Q1: どの占いが一番当たりますか?

A: 「当たる」の定義によります。命術は長期的傾向、卜術は短期的判断、相術は現状分析に適しています。目的に応じて選びましょう。

Q2: 複数の占いで結果が違う場合は?

A: 当然です。異なる情報源とロジックを使うため、結果が異なるのは自然です。複数の視点として受け取りましょう。

Q3: 科学的根拠がないなら意味がない?

A: 「科学的に証明されている」と「役に立つ」は別です。心理療法やコーチングのツールとして価値があります。

Q4: AIで占いは可能ですか?

A:

  • 命術:完全に自動化可能(計算だけなので)
  • 卜術:ランダム生成は可能だが、解釈は難しい
  • 相術:画像認識で可能(顔認証技術の応用)

実際、占星術アプリや顔診断AIは既に存在します。

Q5: プロの占い師はどの分類を使う?

A: 多くのプロは三術を組み合わせます。専門分野を持ちつつ、複数の技法を使い分けるのが一般的です。


9. まとめ

占いは命術・卜術・相術の3つに大別でき、それぞれ異なるロジックと用途を持ちます。

三術の特徴まとめ

分類最大の強み最大の弱点おすすめ度
命術再現性が高い日々の判断には不向き★★★★★
卜術柔軟性が高い再現性がない★★★★☆
相術視覚的で分かりやすい主観的判断が多い★★★☆☆

活用する際の3つの心構え

  1. 目的に応じて選ぶ:長期=命術、短期=卜術、改善=相術
  2. 複数の視点を持つ:1つの占いに依存しない
  3. 科学的思考を忘れない:盲信せず、ツールとして活用

三術を理解し、賢く使い分ける。

それが占いを最も有効に活用する方法です。

この記事は、占いの分類を体系的に整理したものです。科学的根拠が限定的であることを理解した上で、自己理解や意思決定のツールとしてお楽しみください。

#科学は宗教っちゃ宗教 #データは占いっちゃ占い